東京・豊洲市場で1月5日に行われた新春恒例の初競りにおいて、276キロの大間産クロマグロが過去最高級の2億700万円で競り落とされました。この栄誉を手にしたのは青森県大間町のベテラン漁師・竹内正弘さん(73歳)です。25年間の漁師人生で8度目となる一番マグロを獲得し、「本当に夢みたいだ」と感動を語りました。
大間町の伝説の漁師・竹内正弘さんの軌跡
青森県の北端に位置する大間町は、クロマグロ漁で知られる日本屈指の漁師町です。その中でも竹内正弘さんは長年にわたり活躍し、今や「伝説の漁師」として地域で広く知られています。
竹内さんは漁師歴25年のベテランでありながら、常に新しい挑戦を恐れず、若い漁師とともに現場に立つことを大切にしてきました。今回の一番マグロを獲得した際にも、「勝負は魚との対話」と語り、長年の経験と勘に基づく冷静な判断が勝因だったと振り返ります。
若き漁師への継承を見据えて
竹内さんは青森テレビの取材の中で、「若い漁師に負けたくない気持ちはない」ときっぱりと言い切りました。これは単なる謙遜ではなく、竹内さんの真剣な思いを表しています。「むしろ、自分が培った経験や知識を若い世代に伝えていきたい」と続ける言葉からは、大間の漁業を次世代へ受け継ぐことへの強い責任感がうかがえます。漁業は自然との闘いであり、常に危険と隣り合わせの職業です。その中で培ったノウハウを若い漁師たちに伝えることは、彼にとって使命とも言えるでしょう。
竹内さんは普段から、若い漁師たちと積極的に交流を持ち、釣り方や魚の見極め方といった技術面だけでなく、自然との向き合い方や漁師としての心構えも伝えているそうです。「海は厳しいが、そこに生きる誇りがある」と語る竹内さんの言葉は、若手漁師たちにとって大きな励みとなっています。
秘訣は「運と直感」?
8度目の一番マグロを手にした竹内さんに、その秘訣を尋ねると、意外にも「秘訣なんかないよ」と笑いながら答えました。しかし、その裏には長年培った技術と経験、そして鋭い観察力が隠されています。実際に今回のマグロを釣り上げた際、竹内さんは「これは勝負になる魚だ」と直感的に感じたと言います。この直感は、長年の経験からくるものです。
竹内さんは、「大間の海は毎日違う顔を見せる」と語り、その日その瞬間の海の状況を読み取る力が漁師にとって最も大事だと強調します。さらに、「運も重要だが、それを生かせるかは自分次第」と語る竹内さんの言葉からは、単なる偶然に頼らない強い意志と覚悟が感じられます。こうした心構えが、竹内さんを何度も一番マグロに導いてきたのでしょう。
竹内さんの姿勢は、単に一匹の魚を釣り上げることではなく、自然と向き合い、その中で最善を尽くすことの大切さを教えてくれます。今回の快挙もまた、長年の経験と積み重ねによるものと言えるでしょう。
一番マグロの記録(過去16年分)
豊洲市場時代(2019年—2024年)
- 2024年:238キロ、1億1424万円
- 2023年:212キロ、3604万円
- 2022年:211キロ、1688万円
- 2021年:208.4キロ、2084万円
- 2020年:276キロ、1億9320万円(令和初の1億円超え)
- 2019年:278キロ、3億3360万円(過去最高値)
築地市場時代(2009年—2018年)
- 2018年:405キロ、3645万円
- 2017年:212キロ、7420万円
- 2016年:200キロ、1400万円
- 2015年:180.4キロ、451万円
- 2014年:230キロ、736万円
- 2013年:222キロ、1億5540万円(初の1億円超え)
- 2012年:269キロ、5649万円
- 2011年:342キロ、3249万円(函館戸井産)
- 2010年:232キロ、1628万円
- 2009年:128.4キロ、963万円
2025大間の栄光再び!豊洲初競りで2億700万円の一番マグロ誕生のまとめ
今回の豊洲初競りでは、大間産クロマグロが再び注目を集め、大間町の漁業の誇りを示しました。竹内正弘さんが若い世代への継承を見据えて語った言葉や、過去16年間の記録は、マグロ漁の伝統と未来への希望を象徴しています。日本の食文化を支える漁師たちの挑戦はこれからも続きます。来年の初競りにも期待が寄せられます。
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